おまけ


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「じゃねぇよ、ンのクソジジィ!」

周囲が闇に沈むなり、ぬらりひょんの私室に怒鳴り込む影が一つ。

「何じゃリクオ、静かにせんか」

「なぁにがメデタシだ!昼を苛めやがって。俺は騙されねぇからな」

荒々しく部屋に入ってきた夜に、若い姿のままのぬらりひょんはニヤリと笑う。

「そうか?昼に妬いてもらえて嬉しかったじゃろ?それにこれで何かあればリクオもお主も堂々と鴆を頼れるじゃろぉが」

「うっ…」

それは実際、夜も考えていたことだ。

「感謝されこそすれ、怒鳴り込まれるとはのぉ。心外じゃ」

それでも、にやにやと笑うぬらりひょんが気に障ることに変わりは無く、

「余計なお世話だ。それから、これ以上昼にちょっかい出すなよ!昼は俺のだ」

バシンと、夜は言い捨て、障子を乱暴に閉めてぬらりひょんの私室を後にする。

「ふむ。これが馬に蹴られるという気分か…」

一方、自室へ戻った夜は自身の内側から聞こえてきた声に少しだけ冷静さを取り戻した。

《夜、落ち着いてよ。結果的には良かったんだし》

「鴆に知られた件はな」

《……?》

自室に置かれた姿見の前に立ち、掛かっていた布を払うと夜は言う。

「お前ジジィの若返った姿見て一瞬見惚れただろ?」

《えっ!?ち、違うよ!…と言うか、起きてたの?》

「眠ってた。けど、昼の心が乱れたのを感じて目が覚めた」

俺よりジジィの方が良いのか?

と、ジッと姿見を覗き込み、まるで鏡の中に人間のリクオを見て、夜は聞く。

《そうじゃなくて、どっちかって言うとじぃちゃんに夜を重ねて見ちゃって。だから…》

「俺を?」

姿見に驚いた表情を浮かべる夜が写る。

《そうだよ…》

小さくなった声に、姿は見れなくても、昼が照れてるのが分かる。

その一言がストンと夜の胸の中に落ちてきて、口元に淡い微笑が浮かんだ。

「そうか」

《…うん》

パサッと、退かした姿見の布を下ろし、夜は敷かれた布団に足を向ける。

「そこで待ってろ。すぐ行く」

《うん。僕も夜に会いたい》

ひとづて何かじゃなく、キミの口から話を聞きたい。

鏡越し何かじゃなく、目の前のキミに会いたい。

会って、触れて、互いに笑い合いたい。

僕もキミと同じ気持ちだから。

同じだけヤキモチを妬いちゃうんだ。

それは仕方の無いこと、…だよね?



end



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